押切蓮介『ミスミソウ』

押切蓮介の『ミスミソウ』を読みました。Amazonレビューが良かった、という安易な理由で購入したのですが、正直、特筆すべきものはほとんどないように思いました。過疎化の進んだ村(あるいはニュータウン)と狂気を結びつけるような作品は数多く見られますが、そのような作品において、やはり背景は重要でしょう。カネコアツシの『SOIL』や岩井俊二の『リリイ・シュシュのすべて』などは、「どんな土地か」ということをきちんと描いてますよね。この作品には、そういった意味での描き込みが、圧倒的に不足しているように感じました。背景に関しては、絵の上手い下手の問題ではありませんからね。ひぐちアサさんなどは、絵がヘタであるように言われていますが、『おおきく振りかぶって』の背景などを見ると、めちゃくちゃ丁寧に描いてあるわけです。要するに作品に対する誠実さや愛、あるいは熟考の産物であるわけですから、4冊同時発売みたいなことをするなら、1冊を丁寧に描いたほうが良かったのではないか、と思います。まぁでも、ティム・バートンのキャラクター風の顔は嫌いではありません。