カフカ研究・読書

三原弟平「「事実−観察」の諸相」(『カフカ解読−徹底討議「カフカ」シンポジウム』所収)

報告:三原弟平 <「兄弟殺し」の奇妙さ―同化の拒絶あるいはきまぐれな語り> 殺人者シュマール →凶器のナイフの刃先の乱れを直すため、片足を上げ、その上げた足の靴底で「ヴァイオリンを弾くように擦っている」 →滑稽味目撃者パラス →「どうして近くの三階…

野村修「時代のなかのカフカ」(『カフカ解読−徹底討議「カフカ」シンポジウム』所収)

報告 <ブレヒトのカフカに対する評価> 資料価値のある叙事文学といえばヴェーデキントとカフカの作品くらいだ(1926) カフカは、真剣さとは縁もゆかりもない文学環境のただなかの「ひとつの本当に真剣な現象」である(1928) 社会主義の作家は、ブルジョ…

好村富士彦「カフカにおけるユダヤ人性」」(池田浩士、好村富士彦、小岸昭、野村修、三原弟平『カフカ解読−徹底討議「カフカ」シンポジウム』所収)

報告:好村富士彦 <ユダヤ人作家とは> ・属している社会でのユダヤ人の同化の度合い ・自己のユダヤ性を、自己の仕事の中で、どのように自覚的に扱おうとしているか →この2つにある作家がユダヤ人作家と呼べるかどうかがかかっている<ベンヤミンのカフカ…

小岸昭「境界性としてのカフカ」(池田浩士、好村富士彦、小岸昭、野村修、三原弟平『カフカ解読−徹底討議「カフカ」シンポジウム』所収)リライト

報告(小岸昭)<境界の主題> ・カフカ文学に見出せる様々な境界 Ex. ) 日常/非日常、近代/前近代、文化/野蛮、天/地、人間/動物(『変身』)、生物/無生物(「家父の心配」)、子供/大人(『失踪者』)、生/死(「猟師グラックス」)、精神と信仰…

ウルリヒ・フュレボルン「個人と「精神的世界」−カフカの長編小説をめぐって」、クロード・ダヴィッド編、円子修平、須永恒雄、田ノ岡弘子、岡部仁訳『カフカ=コロキウム』所収

<比喩の生/現実の生> カフカは自分の想念に浮かぶ詩的形象世界を表すのに、言語はあまりに不十分であると考えていた。<寓話> 寓話=実践的な意図を持つたとえ話*1。<カフカの寓話> 心理学的なパースペクティヴィズム(遠近法主義?)を用いて描写され…

池田浩士・好村富士彦・小岸昭・野村修・三原弟平『カフカの解読−徹底討議「カフカ」シンポジウム」(1)

指導教官から又借りしていた研究書を読み始めた。この本は、1982年に出版されたもので、各研究者が報告し、その内容に関して全員で討議し合うという硬派なものになっている。以下メモ書き。私自身による補足説明や主観的解釈は色を変えて記述する。<小岸昭−…