羽生生純『アワヤケ』(4)

完結しました。まぁ、家族をテーマにした表現としては、新しいとか、画期的だとか、そういうものでもなかったですね。マンガ自体のナンセンスさにおいて、突出している部分があるとはいえ、「家族なんて虚構だ」みたいなことは、今まで散々言われてきたことですから。完結したことで、作品自体も矮小化してしまったかな、という感が拭えませんね。
作者があとがきで書き記しているように、「あなたの子供に生まれてきて良かった」という結婚式に新郎新婦が朗読する手紙のような、あるいは「お前の笑顔が、お父ちゃんの栄養さ」という小さいお子さんのいる家庭から来る年賀状のような、そういう家族の描き方が、最近目立っていて、それに対して気持悪さを感じている、というのは共感できます。SEAMOの『MOTHER』とかが、典型ですけどね。あれは、2pacが「Dear Mama・・・」と唄うのとは、違うと思うのですが、こんなことを書いたら、ファンの人に叱られるかな。まぁ、良いですけど。
最近、家族を中心テーマにした表現で、感心したことがあるとすれば、年代記的なスゴさを感じたとき位だと思います。それはただ、かくも精緻に描いた、という作者の根気、誠実さと技量に対する拍手喝采であって、そのような役割は、メディアとしての性質上(あるいはサイズの問題上)、小説やテレビドラマが担うことになります。というわけで、家族マンガに対しては、オルタナティヴな家族観/家族像を提示する類のものを期待するわけですが、それが難しいみたいですね。「はっは〜ん。そうきたか」というものには、まずお目にかかれません。今後しばらくの家族マンガは、合わせ技で何とか凌いでいくしかないのだと思います。しかしながら、こういう虚脱感/停滞感は、才能ある描き手が一人現れればすぐさま払拭される類のものなので、そういう才能を期待しつつ、来月もマンガを読みたいと思います。来月は継続購入中マンガの新刊が数多く出版されるので、個人的には楽しみでもあり、憂鬱でもあります(預金残高≒0)。
※ここで、『アワヤケ』を誉めることはできませんでしたが、普通に読めば面白いマンガです。おススメはし辛いですけどね。ダメな人はダメだと思いますし。

アワヤケ 4 (BEAM COMIX)

アワヤケ 4 (BEAM COMIX)